暑中お見舞い申し上げます。
毎年この酷暑の時節になると私は干潟のカニの撮影に赴いています。
大潮の日に三浦半島の干潟でどろんこになりながらカニ達の生態を観察し写真に収めていると『あ〜!夏だなぁ〜!!』って実感が湧くのです!
干潟のカニ達は、様々な特徴や生態を持っているのですが、今回特に紹介したいのが『アカテガニ』です。
アカテガニは普段は森の中で暮らしているのですが、繁殖時期になると海に降りてお産します。
7月下旬〜9月上旬までがその行動を観察出来る期間ですが、大潮の晩に限られます。
ところで地球上の生物の繁殖、海洋生物等は特に潮周りの影響を受けます。
大潮周りの時が特に多く、また夏に繁殖期を迎える生物が多いのも興味深いところです。
アカテガニは午後6時過ぎには森から大群で海岸にゆっくりと降りて来ます。日没直前の午後7時前には波打ち際はアカテガニの大群で赤く染まります。
私はもう10年来アカテガニ等の観察をしていますがこれほどの大群は今まで見た事がありませんでした。この夏に新たな撮影ポイントに加えたエリアです。背景の赤く見えるのも全てアカテガニの雌です。
アカテガニの雌はお腹に0.3mmの卵を数万匹かかえています。
子を持った母の美しくも健気な姿が力強く目に飛び込んで来ます。
やがて日が落ちて真っ暗になると、アカテガニの雌は一匹ずつ波打ち際に降りて来てお腹をパタパタと震わせて、幼ガニ(ゾエア幼生)を一気に海に放ちます。
無数のアカテガニの仔が海に旅立って行く瞬間です。
この一連の動作はわずか数秒の出来事です。
波が大きいときはアカテガニは翻弄されながら必死に泳ぎながら放仔します。
放仔を終えたアカテガニの雌は森に帰って行くのですが、波打ち際から数メートルの所で雄が待ち構えていて交尾に至るのです。
交尾は数分から数十分続きます。
長く続く時には、泡を吹いてしまいます。
午後8時半頃には漸く繁殖活動は終わりに近づき、アカテガニの大群は森の中に帰って行きます。
生まれたゾエア幼生は体長約2mm弱です。
眼と尻尾がもうはっきりとしています。
アカテガニは年3回、3年間放仔するそうですが、この間に親になるのは2匹くらいだそうです。
写真記事投稿:横山和男
http://www.kanifilm.com